今西一男教授と阪本尚文准教授に学長表彰

2024年06月20日 [カテゴリー:紹介]

 令和6年度学長表彰表彰式が行われ、行政政策学類からは今西一男教授と阪本尚文准教授が表彰されました。
 今西教授・阪本准教授は、コース横断型問題探究セミナーⅡ・Ⅲ「地方議会の議場構造論」に対して、学長教育表彰を授与されました。
 阪本准教授は、「草創期福島大学経済学部の総合的研究」が第5回インテリジェント・コスモス東北文化奨励賞を、また、ポスター報告「高橋幸八郎の戦争―1941-1945」が2023年度政治経済学・経済史学研究奨励賞を受賞したことに対して、学長学術研究奨励彰を授与されました。

(左が今西教授、右が阪本准教授)
学長教育表彰
[今西教授のコメント]
 今回、学長教育表彰を賜り、大変光栄に思います。何より、教育表彰は学生あってのものです。1年間、熱心に学修にとりくんだ学生たちを誇らしく思っております。
 「地方議会の議場構造論」というテーマは、政体や制度の現れとしての議場のつくり、あるいは議場のしつらえが規定する議会や議員のふるまいを双方向で研究するという内容からなっています。つまり、憲法学・政治学・建築学といった分野を、文字どおり横断する教育の試みでした。今回は議場でしたが、空間をめぐって多様な発想が立ち現れる面白さを学生に伝えることができていれば、大変うれしく思います。
 学修の過程ではフィールドワークでおうかがいした自治体の議会関係者のみなさま、ご出講いただいた講師のみなさまにご高配・ご指導を賜りました。そして、行政政策学類にはこうした授業を実現する機会を設けていただきました。各位に心よりお礼申し上げます。

[阪本准教授のコメント]
 学長教育表彰をいただき、たいへんに光栄に存じます。行政政策学類では、2年生に対して、「地域政策と法」コースと「地域社会と文化」コースのそれぞれ1名の教員が共同で行う「コース横断型問題探究セミナーⅡ・Ⅲ」を開講していて、2023年度は、阪本と今西教授が受け持ちました。憲法学・政治学・建築学などに共通する学際的研究の主要なテーマとして近年高い関心を集めている議場構造論をテーマに据えて、本セミナーでは、議場構造論や地方議会についての最近の文献を講読したほか、福島市議会、川俣町議会、福島県議会、郡山市議会を訪問し、各議場の特徴を調査したり議員・事務局に聞き取りを行ったりしました。また、気鋭の若手建築家、出江潤氏を招き公開授業を行い、年度末には、1年間のまとめとして、郡山市議会議場を新たにする場合のアイディアを学生がポスター発表し、郡山市長、品川萬里氏から講評を頂戴しました。
 阪本にはこれまで文献講読中心のゼミしか運営の経験がなかったところ、今西教授が熟練の社会調査の手腕を発揮して体系的なフィールドワーク(準備から振り返りまで)を企画してくださったおかげで、学生とともに充実した、楽しいフィルードワークを実施できました。公用車を何度も運転してくださったことも含めて、こちらの授業の最大の立役者はもちろん今西教授ですが、受講生、訪問先の議会関係者、さらに「コース横断型」という学際的な独自の教育実践の機会を準備してくれた行政政策学類のおかげで、この授業は成立しました。皆さまに、心から感謝申し上げる次第です。

学長学術研究奨励賞
[阪本准教授のコメント]
 学長学術研究奨励賞を授与していただき、まことにありがとうございます。受賞理由ですが、以下の二点になります。すなわち、①戦後の我が国の社会科学に大きな影響を与えたフランス革命史研究者、高橋幸八郎の戦時中の思想と行動を日記などの新史料に拠りながら明らかにするポスター報告を、2023年政治経済学・経済史学会において行い、特に優れた研究業績と認められ政治経済学・経済史学会研究奨励賞を受賞したこと、②1940〜50年代の福島大学経済学部に関する共同研究をまとめたことで(阪本尚文編『知の梁山泊――草創期福島大学経済学部の研究』八朔社、2022年)、第5回インテリジェント・コスモス東北文化奨励賞を受賞したこと、です。
 前者についてですが、2022年度福島大学FoR-Aプロジェクトにご指定いただき、高橋関係のエゴ・ドキュメント(書簡、日記など1人称で書かれた史料)の利用が可能になりました。そして、整理した日記を分析したところ、髙橋が朝鮮語の新聞に時事評論を寄稿していたことが判明したのですが、佐野孝治氏(福島大学理事・副学長)・李智恵氏ご夫妻にそれを翻訳していただきました。さらに、初めてのポスター報告に際して、研究・地域連携課の荻多加之氏・横島善子氏にご助言を賜りました。この場を借りて、厚くお礼申し上げます。
 後者についてですが、コロナ禍でどこにも調査に行けなくなったけれども、福島大学附属図書館で完結するような仕事ならできるだろうと、当時の福大経済の法学者を含むスタッフたちのことを調べ始めたところ、これがたいへんに面白かったわけです。戦時中から戦後の混乱期にかけて福島に集まった優秀な若手研究者たち「福島学派」は、いくつかの領野で福大経済を日本屈指の研究機関に、まさに小さくても存在感のある大学に育て上げました。20世紀を代表する西洋史家、大塚久雄は、こう言っています。福大経済には、「俊秀がつぎつぎに集まり、そして育っていった。それはたしかに一つの偉観だった」。「そのようにして、福島大学の経済学部は学界でもはや誰一人知らぬ人もないほどの確固とした地位を築くにいたったのであった。私はいまでも、大学の振興や改革を論ずる人々には[...]この業績をいま一度振り返ってみるように勧めることにしている。」(大塚久雄『社会科学と信仰と』みすず書房、1994年)
 70年前と今とでは状況が違うので、通用しない点もあるでしょう。しかし、「よく遊び、よく飲んで、そしてよく議論をして、よく勉強し」(大石嘉一郎)た彼らの「自由活発で創造的な雰囲気」(吉岡昭彦)であるとか、地方大学の地方との関わり方などは、今日なお、大学改革の参考となると考えます。大学改革のただなかにある本学で、当時の福大経済の歩みに光が当たるきっかけになるのであれば、改革への賛否はひとまずおくとしても、共同研究をまとめた意味も幾分はあるかもしれません。
 縷縷述べてきましたが、今回受賞対象となりました研究はいずれも福島大学がなければ成り立たないものでして、福島大学という学問共同体をありがたく存じております。

令和6年度学長表彰表彰式については、下記もご覧ください。
https://www.fukushima-u.ac.jp/news/2024/06/012852.html

トピックス

このページの先頭へ戻る