文化財を通じて災害対応や防災を学ぶ  ~コア・アクティブ科目「これからの地域と歴史・文化遺産」の紹介~

2022年06月20日 [カテゴリー:紹介]

文化財を通じて災害対応や防災を学ぶ ~コア・アクティブ科目「これからの地域と歴史・文化遺産」の紹介~

本学類の特色ある教育として「コア・アクティブ科目」があります。

その一つである学際科目として、201920212022年度に「これからの地域と歴史・文化遺産」が開講されています。

文化史担当の阿部浩一が企画し、2011年の東日本大震災・福島第一原発事故の後に福島の地で生まれた、文化財を軸とする新たな研究の進展、地域住民との実践的取り組みなどを、福島の現場の最前線で活躍する方々を講師にお招きして、学生たちに学んでもらおうという授業です。

今回は2022年度に開講される授業の中から、2回にわたる実習(ワークショップ)をご紹介します。

521日(土)45限には、千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館から天野真志先生をお招きし、水害で被災した古文書をテーマにご講義いただき、実際にどう対処したらいいのかという実習(ワークショップ)が行われました。

被災した状態にした古文書です(もちろん本物ではありません)。

水濡れして泥にまみれた古文書が目の前にたくさんあったら、皆さんはどうするでしょうか。

受講生たちは数名のグループに分かれ、目の前の水損文書を触ったりしながら、どんな対応が必要かを話し合い、優先順位や気を付ける点などについて意見を出し合って、グループの意見としてまとめていきます。

グループごとに議論した結果を発表し、さらに全員で考えていきます。

その作業過程の一つである「乾燥させる」作業を実際にやってもらいました。

先生がやり方をレクチャーし、身近にある古新聞を使って水分を抜いていきます。

自分でやってみると、難しくないけれど、思ったよりたいへんな作業であることが実感できたと思います。

こういうことを実践する機会はあまりないと思うかもしれませんが、2019年の令和元年東日本台風のときには、文化史ゼミ生を中心に、本宮と伊達でレスキューに取り組んだ実績があります(写真は201912月のときのもの)。

災害はいつどこでおこるかわからないだけに、何事も学んでおくことが大切です。

618日(土)34限には福島県立博物館の筑波匡介先生をお招きし、福島県博が提唱した「震災遺産」という新しい考え方と実例、課題、震災遺産を活用した防災教育についてご講義いただいたのち、避難所で起こりうるさまざま課題について、グループで議論するワークショップが行われました。

たとえば、300人の避難者のいる避難所におにぎり100個が届きましたが、今日はもう追加の予定がありません。

あなたはおにぎりを配りますか?配りませんか?

グループ内でも両方の立場から議論が交わされ、それに対する解決策の実例が紹介されました。

次に、避難所の運営に携わることで起こりうるさまざまなトラブルについて、自分が運営グループになったとして、課題にどう対処するか、3分で考えて、次々に出てくる課題への対処法を考える実践的なワークショップが行われました。

たとえば...

ペット連れの避難者が来た場合、どうしますか?

トイレが断水してしまったら、どうしますか?

将来、自治体職員になったら、避難所対応を任される可能性も十分あり得ます。

皆さんだったらどうするでしょう?

受講生たちの中からは、短い時間でも課題を的確に把握し、避難所のイメージを想起しながら、適切な解決策を示す意見がいろいろと出てきました。

実際にどんな対応が行われたのかは、震災遺産からも知ることができます。

たとえば、当時使われていた避難所の掲示物などは、重要な震災遺産の一つです。

そこからさらに当事者の証言を集めていけば、理解はより深まっていきます。

震災遺産も、収集・展示から活用に向けて、次の段階に進みつつあることを実感しました。

この授業では、歴史学、考古学、民俗学、美術史、地理学、保存科学などの多様な専門分野、博物館、自治体職員、公益財団、大学などのさまざまな立場から講義が展開されます。

COVID-19の終息後には、当初の目標通り、公開授業として一般市民にもご参加いただき、文化財についての理解をともに深め、課題を共有する場としていければと思っています。

これからのさらなる展開にもご期待ください。

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