1日目 講義内容(なぜ心理学史か?)
1−1 映画「タイタニック」と心理学史
映画「タイタニック」には、アメリカに戻(ってロシア貴族と結婚させられ)るヒロイン・ローズが食事中に、大きな船を作ることを皮肉って「フロイト博士の説」について話すシーンがある。このシーンからいくつか考えてみる。
まず、タイタニック号沈没はいつか? 1912年。
1912年にこのような会話がなされていることの意味
←それ以前に、フロイトの説が紹介されていなければいけない。そのような機会があったか?
1909年、クラーク大でフロイトが講演を行っている。講演の時の記念写真はこちら。クラーク大HPにも解説(英文)があります。
→一連の講演旅行が爆発的な反響をもったことは良く知られている。
2年間の間に上流階層の間のおしゃべりにまで浸透していても不思議ではない。
もっと考えてみよう!
呼んだ人は誰だったのか?
フロイトの講演内容を読むことができるのか?
日本人はその場に居なかったんだろうか?
1−2 授業の目的
心理学史に関する知識を身につける
最近の認知心理学によれば知識とは
宣言的知識 わかるための知識 「○は×である」のような形式の知識。
手続き的知識 できるための知識 折り紙の折り方。記憶できない人も職人になれる。
実際には宣言的知識が「棒暗記」されるので知識として活用されない。
最近の認知心理学によれば知識を定着させるのには「興味」「意味」を持たせることが大切。
興味 知的好奇心(鉄道の駅は覚えられるのに・・・)
意味 符号化 (ひとよひとよにひとみごろ いいくに作ろう)
知識の整理 体系的な記憶は体系的に想起しやすい。体系や枠組みをスキーマと言う。先にスキーマがあると学びやすい。
まず心理学史に興味をもってもらい、知識の体系を伝え、符号化により定着化させ、さらに手続き的知識を駆使して自分で調べることができるようになってもらいたい。
1−3 1つだけ覚えよう
一夜泣く(1879)、ヴントが心理学実験室を開設。
単なる符号化に過ぎないが、近代心理学の始まりの年を覚えよう。
★なぜこの年が「近代心理学の始まりの年」なのか?
★1879年という年がどういう年なのかを知ると、その意味が違ってくる。
→たとえば、この年が江戸時代ではなく明治時代である。
→日本が近代化を推進し始めた後に、心理学が近代化している。
1−4 なぜ歴史研究をするのか?
過ちを避けるため | |
つながりを付けるため(他分野間、他国間、他学問間) | |
現在をよりよく知るため | |
未来を展望するため | |
学問のアイデンティティ(その学問の人はほぼ全員知っているが、他の学問の人はほとんど知らないことというのが少しはあってよい) |
1−5 歴史的考察はみんなやっている!
歴史を考えることは特別な営みではない!日常生活でもやっているでしょ。
→好きな人と付き合うときに未来の話だけするヤツはいない!
かといって、いきなり昔の話からされても困る!=文脈を共有できないから
→歴史は、現在に近いところから遡って考えていくのも1つの方法である。
という感じで授業をスタートさせました。